淺野健一は、高校で美術を、大学で彫刻を学んだ後、仏像修復の仕事に携わりながら作家活動を開始した現代彫刻家である。
彼の作品の根底にあるのは、日本の伝統芸能に息づく「憑依」「一体化」のテーマである。幼少期に寺社を訪れた際に感じた厳かな空気、祈りや畏れの心が生む神秘性と緊張感が、彼の原風景となっている。
初期の代表作《能格》に始まり、趣味で打ち込んだ格闘技を通じて身体表現の在り方を探究した。その後、仏像修復を通じて木彫・漆・膠といった古典技法を習得し、伝統の技を自らの表現に取り込んでいった。
尾張という土地に継承されるからくり人形の文化にも影響を受け、球体関節や操り糸を用いた動く木彫へと作品を進化させる。やがてモーター駆動の茶運び人形「電波式」や、カメラを内蔵し視覚的に一体化を試みる《武神一号機》など、果敢に現代テクノロジーを木彫に取り入れた。
その活動は早くから評価され、第十三回岡本太郎現代芸術賞 入選、第八回円空大賞展 円空賞 受賞をはじめ、国内外で多数の展示歴を重ねる。特に下鴨神社での「依代プロジェクト」では、神霊が依りつく対象を現代的に再構築し、自身のテーマを鮮明に提示した。
「憑依」をテーマにしたこれらの作品群は、伝統芸能の精神性にポップカルチャー的要素を融合させ、現代アートへと昇華させるものである。
そしてそのコンセプトを日常に落とし込む試みとして、シルバーアクセサリーの制作へと歩みを進めた。代表作の「しめ縄の腕輪」をはじめとするシリーズは、彫刻家としての造形力と精神性を兼ね備え、単なる装飾を超えた「身につける彫刻」として展開されている。
シルバーアクセサリー本来の意味に立ち返り、厄除けブレスレットや魔除けシルバーとしての力を宿す作品は、身につける人の守護と祈りを形にしている。